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Method

業績改善の具体的方法論

FBC⑥ 食材・飲料の原価率は、調理・料飲スタッフの腕前だけで下げられるものではありません。

〇予約部門の業務プロセスを見直せば原価率は下がる。

〇原価率は全館の総合力で下げる、または適正レベルをキープするべきもの。

 

 

FBCを考えるとき、短絡的に

・安い材料で美味しくてお客様が喜ぶ料理を作るのがコックや板前の腕前。

・取引先ともっと交渉して良い品物を安く仕入れる努力を。

・うちのホテル(旅館)はポーションが多きすぎるのでもっと盛り付けの量を減らしては?

・最近、客単価が下がっているので売値に見合ったレシピーを考えるべき。

などと言った議論をよく耳にします。

 

どれも誤りではありませんが、さりとてそのような一面的な思考は必ずと言っていいほど良くない副作用を伴います。国産の黒あわびを使った料理は何んと言っても圧倒的な説得力がありますし、交渉とは要するに値切りなので安物買いの銭失いの危険が伴いますし、売る側の都合で商品を左右することは顧客満足を後回しにすることに他なりませんし、単価や、したがって売上が不調なのは、もっと根本的な処方箋を検討する必要があります。

 

調理の人たちも一生懸命工夫をしながら仕事をしていますのでレシピー原価の計算を間違えるとか、杜撰とも言えるようなプレパレーションをしているとは普通の場合は考えられないので、とてもざっくりと言うと、原価率が上がる大きな原因は「ロス」です。そして、その「ロス」とは、ホテルや旅館の館内連携の不備による「ロス」です。

 

先ず、予約部門は正確な情報を適切なタイミングで発信しているか?

調理部門は仕事の段取りを組む必要がありますので、一般的には2週間前ぐらいのタイミングでおおよその料理数を把握し、食材発注の直前2~3日前に詳しい料理数をチェックします。この時に何某かの「予備」が含まれます。1泊2食プランの商売が多い旅館などでは特にその傾向があります。予約部門は当日予約やウォークインを獲得するためにぎりぎりまで頑張るのでそこに確定分の実数に「+α」が含まれます。そして館内でのコミュニケーションがあまりよくない調理はさらに「+α」を上乗せします。このようにして来館していただけるかどいうかわからない、不幸にも来館されないお客様?の分の料理の仕込みが行われます。高額なフルスペックのPMSの中には予約→プラン別の料理数→食器や食材手配が連動するシステムメニューもありますが、最初の予約情報は人が入力するものなのでそこに含まれる意図やニュアンスを読み取るにははやはりヒューマンコミュニケーションが必要です。

別の言い方をすると、仕事の流れの中で予約部門は最も川上に位置し、発注された料理を作る製造部門やそれを配膳するサービス部門は川下に位置します。川上から正しい内容が正しい流れ方で流れてこないと川下の人たちにはどうすることも出来ません。

 

筆者の温泉旅館での経験で、原価率の高さの要因が不必要に多い予備の料理にあると気付いた時に、先ずは予約の業務プロセスを改善し、その上で調理部門には「今後、予約から回ってくる数字以外は検食分以外は一つたりとも予備は必要ありません」と言いました。調理長から「もし、予約の数字に誤りがあったらどうするんだ?」との発言があったので「はい。おそらく夕食を召し上がれないお客様が出て、とんでもないクレームになり、社長か支配人がお詫びすることになると思います。でも、いいじゃないですか、予約の人が責任を持って数えている数字なので信用してあげましょう」と。

勿論、精神論も含まれている発言ですが、その後、この旅館では原価率は1.5~2%下がりました。

 

また、宴会などの場合は、宴席の客層や料理の好みなどを担当のセールスマンがどれだけ詳しく理解し、それをキッチンに伝えるかも重要です。本来、宴会と言うものは、1,000件の宴会があれば1,000枚の宴会メニューを書くことが基本です。それはお客様の好みに応じた料理を提供する意味と同時にホテル側にも効率的に原価を使えるというメリットももたらします。現在では、業務の効率化のための「〇〇宴会プラン」を販売することが一般的となっており、そのこと自体はお客様にとってもホテル側にとっても判り易く効率的な手法と言えます。しかし、宴会プランだけで10種類も20種類もあるようなスタイルは、折角のホテル側のメリットを放棄しているとも言えるものではないでしょうか?

 

次に、経営状況に関する社内共有、経営全体に関する基本的な考え方の共有も重要な側面です。

調理部門に原価率の「率」だけを至上命題のように課すことは、担当部門の数字に貞操感を持って仕事にあたらせるという意味では正しいのですが、経営全体の観点では合理的ではない部分があるように思います。会社の資金繰りは「率」で行なわれるのではなく「円」というお金で行われます。つまり会社の収入、「実入り」です。中規模、小規模のホテル旅館の経営ではとても重要な側面です。「率」だけが独り歩きすると、例えば「当月の原価率は予算以下に納まりそうだから来月の分を先倒しで仕入れておく」などのような、一瞬正しいような正しくないようなことが行なわれる元となります。

半加工品やレトルト食材などを利用することについても、それらは便利で人件費の節約につながりますが生の材料よりは高価です。材料費も人件費も会社にとっては出費には変わりがありません。効率的な仕入れの方法、人件費の使い方、加えて、お客様の料理に対する満足度、従業員のスキル向上なども面もトータルで議論・判断する経営センスを出来るだけ多くの幹部や従業員と共有することはとても重要なことです。

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