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Method

業績改善の具体的方法論

事故報告書

〇事故報告書は始末書ではありません。オペレーションを磨き上げる大切なツールです。

 

 

お客様からの厳しいクレーム、営業上のトラブルなどについて、その状況や対処の経緯などを会社に報告する事故報告書、ルール化しているホテル旅館は多いことと思います。

本稿は、この事故報告書の運用についてです。

 

もう少し柔らかい言葉で「ヒヤリハットレポート」という名称を使用しているところもあるかと思いますが、これは「事故報告書」とはニュアンスは少々違っていて似て非なるものだと思います。根本的にはヒヤリ、ハットだからまだ『事故』は発生していない。1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300の異常(ヒヤリ・ハット)が存在するというハインリッヒの法則が根っこにあるものとするならば、社員が体験した「300の異常」をレポートして、重大事故を未然に防ぎましょう、というものだと思います。一方、私たちがホテル旅館で運用している「事故報告書」は運営上のトラブルなりクレームなりが残念ながら発生してしまったことについて起案するのが一般的です。

 

よく見る書式では、 

  • 事故発生日時

  • 事故発生場所

  • 当事者(ゲスト、取引先、関係先、等)

  • 当事者(ホテル側の担当者)

  • 事故概要

  • 事故の原因

  • 対処の経緯、顛末

  • 今後の対策

  • 経費処理方法(対処に金銭その他の費用が発生する場合)

  • 回覧先の捺印欄

などを記入することとなっています。

 

この中で、一番大切なのは、言うまでもなく⑧の「今後の対策」です。

ところが、宴会中にお客様に対してお飲み物などを粗相したことに対して「これからはより一層注意深くサービスにあたります。」、予約内容の館内の伝達ミスによるクレームでは「関連部署の情報共有にさらに努めて連絡漏れをなくします。」などという記述が多くないでしょうか?

しかし、宴会サービス中に振り向きざまにお客様と接触して粗相をすることを防ぐ、お客様の予約情報を漏れなくズレなく迅速に館内共有することは、そのこと一つだけで運営に関する一大テーマとして議論を重ねても良いぐらいの話題で、「より一層注意深く…」という取組みだけで改善できるレベルのことと考えるべきではないと思います。仮にそれで解決させるというスタンスであれば、会社は社員の注意力や気づきに依存している、少々きつい表現をすればすなわち怠慢ということになるのではないでしょうか? または、では会社は社員一人一人の注意力を引き上げたり気づきの力を磨くなどのトレーニングはどうしているのか?と、問題の掘り下げようはいくらでもあります。

 

トヨタ自動車の武器の一つに「5つのなぜ」というのがあると言います。何かトラブルが発生した時に「なぜ、予約課が館内発信した情報を間違って受け取ったのか?」→「自分の不注意だったからです。」→「なぜ、あなたは不注意だったのか?」→「忙しくて気がまわりませんでした」→「なぜ、予約情報をご受信するほど忙しかったのか?」…、と言う具合で「なぜ」を5つぐらい掘り下げた所に根本の原因がある、というようなことだそうです。そういう意味では⑥の「事故の原因」と⑧の「今後の対策」は、密接に絡み合っており、トラブルの根本の原因を究明してそこを基点として改善策を作り、運営マニュアルに落とし込むまでが⑧の「今後の対策」となり、やがてそれらが大事な「マニュアル集」となっていきます。そして、一つの改善策=新たな(または修正)マニュアルがまとまったら、今度はそれを関連部署に共有してもらうというステップがあります。

 

事故報告書を管理部門が稟議書のように通番を付けて日付順にファイルする姿を見ますが、これも果たして理に叶ったスタイルでしょうか? 事故報告書は運営の磨き上げのヒントとなる大切な「出来事」集であるとするならば、もっと運営現場に近いところでファイルする、過去のものもアクセスできる社内ネットワークの共有フォルダに保存する、などして現在の運営マニュアルになった経緯の大切な記録とすべきだと思います。

 

また、事故報告書は始末書とも違います。トラブルやクレームの当事者となってしまった社員は、会社の運営フォーメーションの不備な所に落ちてしまってたまたまみんなの代表選手として当事者になっただけのことです。人事評価に響くかもしれないという警戒感が事故報告書の運用を誤らせる要因のひとつとも言えます。

 

事故報告書は運営のブラッシュアップのためのとても有意義なツールであり、前向きで建設的な議論のための教材です。そのような捉え方で運用すれば、その価値はとても高まるものと考えます。

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