〇支出の中で大きな割合をしめるものであるが、その抑制には日々のコツコツした積み上げしか手段が
ないこと。

FBC、フード・ビバレージ・コスト。
その下にさらに“C”をつけてFBCC、フード・ビバレージ・コスト・コントロールとも言います。あるいは、F&Bコントロール、という用語になっていることもあります。直訳すれば「食材・飲料材の原価管理」、ホテルや旅館の仕事に携わった方であれば耳にしたことの無い人はいないと思います。要するに、料理売上や飲料売上の原価まわりのお話しです。
食材については、一般的にレストランでは洋食で30%前後、和食で32~33%、宴会部門ではそれぞれ▲2~4% というあたりが目安とされていると思います。このあたりも皆さんご存知の数字だと思います。
もう少し、当たり前の話を続けます。
例えば、1泊2食プラン18,000円で売上8億円の旅館、があるとします。
このケースでは、お食事中の飲料や売店などの付帯売上が15%だとすると、プラン本体の売上は約680百万円、年間約37,800人のお客様がご宿泊されます。次に、プラン料金18,000円の内
訳(ブレークダウン)は、室料8,500円・夕食8,000円・朝食1,500円だとすると、料理は夕・朝合計で年間約360百万円の売上となります。仮に目標原価率30%とすると食材原価は年間約108百万円。この売上に対して1%は年間360万円、食材原価を1%節約すると年間360万円の支出セーブです。一般的な新卒社員の年収の1人分の人件費より多いです。当たり前ですが2%なら2人分以上、3%なら3人分以上。1泊2食商売が主要な経営形態では料理売上はとても大きな数字なので支出管理としては取組み甲斐のあるジャンルです。また、分母が大きいので地道に取り組めば無理なく成果を出せる分野でもあります。例えば、年間で360万円の節約が実現できるのであればそれは真水の利益ですからその分で社員を一人雇用してCS向上を目指すも、年末の大入り袋で従業員に配るのも、破れた襖の修繕に使うのも、内部留保するも、自由です。
「1%=年間で360万」は大きな数字ですが、しかしながらそれを実現する方法は?と言うと、日々の「コツコツとした取組み×365日」しかありません。
中には、「すべての取引会社を1割値切れば、原価率30%×1割で3%のコストダウンは直ぐ出来る」とおっしゃる経営者や支配人がいらっしゃいますが、この考え方は正しくないことは多くの方が理解していただけるものと思います。ここではテーマが異なるので多くを述べませんがこの考え方は決して良いことではありません。原理原則として1割価格が低い品物は1割分だけ品質の低い
品物と言うことです。仮に、直ぐに応じていただける取引先があったとして、では、その取引会社とのそれまでの取引は何だったのか?など、色々な方向に飛び火する話題になっていってしまいます。
ついでに言うと、ディナー券や業者会の負担を強いることは、単純に後々価格に転嫁されるだけなので利益にはつながりません。会費15,000円の業者会に参加してもらっても、粗利(70%)分の10,500円が一過的に利益になりますが後々価格転嫁されるのは15,000円分と計算すべきです。勿論、何かの理由で不合理に高い価格帯で取引が推移していたものを気づいて是正することまで否定するものではありません。
では、自分達に出来ることは…、無用なロスを排除することです。
①無用にバリエーションの多すぎるメニュー構成になっている場合は、食材の共通化など、ある程度の集約をするなどして原材料の効率化を図ります。このことは人件費の効率化にもつながります。
②フォーキャストや予約状況などの情報をもとに仕入れをコントロールして発注段階
でのロスを防ぎま
す。料理数はおおよそ2週間前段階と直前2~3日前(実際の発注時)の2回、カウントすることが大事です。
③その他営業上の様々な情報やデータに目配りをして活用する。
・ABCデータ
・曜日波動
・周辺イベント等の人の賑わい波動
・外来客対応のレストランの場合は天候波動 など。
④トライアルで特殊な食材を使うメニューを提供する際には、場合によっては度胸を決めて“売り切れ御免”のメニューを作る。
⑤在庫管理
・生鮮ものの多い和食は3日分程度。貯蔵品や冷凍・レトルト品の多い洋食でも5日分~1週間分を目安とする。(納品事情が特殊なケースは除く。)
・当然のことながら、毎月の棚卸は厳格に実施する。棚卸には経営者や支配人も立ち会って、単に在庫高の合計値だけでなく品目ごとの在庫高と販売しているメニューとの関連をチェックすることです。(冷凍うどんでさえ、いつまでも在庫できるものではありません。やがて冷凍焼けして廃棄ロスとなります)
⑥セクション間の共用の連携強化。要するに人参を洋食セクションで半分、和食セクションで半分残し
ていないか、ということです。
⑦ロスの排除とは少し異なる視点ですが、生鮮ものついての相場の動向情報を常に把握し、随時レシピ
ーに反映させるルーチンも重要です。日経新聞の相場欄でも情報は得られますが取引先に教えてもら
う情報のほうが正に生きた情報のはずです。(以前、季節・気候・天候に全く問題
が無いのに米国の港
湾ストライキによりレモンが高騰したということもありました。)
そして、経営者サイドとして最も重要なことは、単に毎月のFBCの数字に一喜一憂するのではなく、これらのことがきちんとルーチン化されているか、プロセスをマネージメントすることです。